研究紹介

Introduction

大谷博司
Hiroshi OHTANI

第一原理計算に基づく理論状態図の構築と準安定物質創成に関する研究

Construction of Theoretical Phase Diagrams Based on First-Principles Calculation and Study on Metastable Phase Formation

本研究では第一原理計算に基づく理論状態図の構築を行い,目的の相が他の相に対して有する相対的安定性を計算する手法と準安定性を克服する方法論の確立に取り組むことを目的としています.これまでの研究により理論状態図においては1kJ/mol前後のわずかなエネルギーの差が相平衡を大きく左右することがわかりました.そこで,このエネルギー差を極限まで縮小するための計算条件の検討を行なっています.その中でも特に固溶体の原子振動の影響が大きいことから,クラスター変分法におけるクラスター有効相互作用エネルギーにこの効果を取り入れる手法を新たに開発しました.図1はこの影響を考慮したNi-Si二元系理論状態図を熱力学的解析による状態図と比較したものです.固溶体の出現範囲や化合物の生成領域などにまだ考察の余地があるものの,原子番号だけを入力源とする理論状態図は現実の相平衡の特徴をかなりよく再現することが明らかとなりました.

図1 Ni-Si二元系理論状態図と熱力学的解析による状態図の比較